冬のトマト氏の講演

                                                                                          

     「冬のトマト氏の講演」が行われた氏の自宅書斎

 ■ 農家の卵の殻から出られないでいる君に 

 卵ですからまだ農家じゃないという事です。大阪府がやってる準農家というやつ、この準農家にすらなれない、土地がない為に。そういう人たちに呼び掛けて情報の交換とか、蘊蓄を傾けるとかできればなあというのが趣旨と言いますか。私自身大阪府の準農家候補者となって一年と三カ月、いまだに畑に立つことができません。ただ昨年の十一月に電話はありました。堺市の休耕田らしいのですが、地図をひろげただけで断りました。断るのに何分も掛からないというのは淋しいことです。せめて一晩は夢を見たかった。一年と三カ月も待ったのですから。農地紹介の待機状況一覧表というのが送られてくるのですが、それによると堺市の紹介は3.27付けで累計11とあります。ところが担当の方には耳が痛いでしょうがこの数字は10.31付でも11のままです。どうやら物件を獲得できるのは農閑期に多いようで、この時期を逃すと私の場合また一年プランターを相手にトマト栽培の考察と実験を続けることになるのではないか。私が作ろうとしてるのはトマトです。それも露地栽培ですから酷暑の大阪では春になって種をまいたのでは遅い。小さな温室を作りまして、とりあえず2.1に種を蒔いてみました。発芽が2.15,定植は4月初旬。葉に触れたり揺すってやった効果か、幹の太いがっしりした苗です。植え方は横仕立て、これだと長い支柱がいらず風の影響も少なくてすむ。誤算だったのは尻腐れ病にかかったことです。原因は水かカルシウム不足か。それと皮が厚い「麗夏」の品種を選んだのもどうだったでしょうか。ちょっとこのへんで休憩を兼ねて温室を見て貰いましょうか。
 私の居住地は松原市ですが、府も松原に関しては紹介できる農地を獲得できていないようです。そこで堺と富田林が頼みの綱になるのですが、二市とも私の上にはまだ六、七名のライバルたちがひしめいています。にもかかわらず紹介が回ってきたのですから先日の物件はよほど人気がなかったのでしょう。その人気のない原因が水田という事なら私にはむしろ好都合です。私は雨が降ればプールになるような畑で随分と苦労してきましたし、一個から数十匹のナメクジが出てきたキャベツ・白菜を作ったこともあります自慢じゃないですけど。数十匹のナメクジや蚊や沼地がどれほど怖いでしょう。好条件をまっているあいだに一年また一年と老いていく方が恐怖です。推進課の方々に圧力をかけるつもりは毛頭ございませんが、今年もまた先の見えない暗い卵の中で除夜の鐘を聴くことができました。同じように悶々として羽ばたくことができないでいる君。一人で閉じこもっていたら厚い壁になります。手紙良し、会うもよし、龍馬のように熱く農業の未来を語りましょう。還暦を過ぎた私は龍馬にはなれませんが、一筋の光くらいは差し込んで来るでしょう。連絡を待っています。

  2014.2.7https://www.youtube.com/watch?v=joBEquxCPkw