Ｋ子様

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　K子様（2014）

　お元気でしょうか。〝なめし〟には結局再会できませんでした。大根の葉では私の記憶の底にある幻のなつかしい味は再現できなかったのです。まあいいでしょう。話というのはそんなことではなくて私は現在1000㎡の畑を借りるのに苦労しています。何の因果でしょう農業がしたくなったのです。トマトこそわが人生最後の檜舞台と見つけたり、です。実のところ私でも活躍できる準農家という制度が大阪府にできまして、2011年にです。できたのですが、残念なのはそれを知ったのが翌年の〆に近い時期だったことです。というのもこの制度から70名程の準農家が誕生していますが、その殆どは制度を立ち上げた年の数字で、私が候補として登録された12年からは府も物件を獲得できないでいるのです。 覚悟はしていたもののプランターだけを見つめて一年と五カ月が過ぎてしまいました。もう待てないです。このまま法螺吹きとして死なすには惜しい男から、一つだけお願いがあります。少女のころから耳年増と言われ、何でも知っていそうだったあなたから村の方々に声をかけて貰えないでしょうか。休耕田でいいんで す。1000㎡あれば十分です。ただ今すぐではないです。こっちでもぎりぎり（暮れ）までは待ちますが、暮れになって動いたのではトマトの準備等考えるとまた一年百姓デビューが遅れること必至です。ですから今から動いているのです。弘御兄にも同じものを出しました。御兄がいる日本で一番美しい村―岩城には知人もいますが、こっちは会って頼みます。西予市の「老人には生きがいを与えない課」にもメールしておきます。 最後に賢弟の会社にも小さな爆弾を送ってやります。弟は静かに死んでくれと哀願するでしょうが、私にも生きる権利があります。生計については大丈夫です。トマトが売れなくても生活はできますし、失敗して青くなるような規模のものは考えていませんから。じゃあ趣味でいいじゃないかと言う人がいますが、たとえば歌に自信ができると大きな舞台で歌いたくなりませんか。大勢の人に聴いて欲しくなるでしょう。こんなおいしいトマト食べたことがないって喜んでもらった実績はありますが、所詮御裾分けのトマトです。買ってもらえるトマトを作りたいんです。アマチュアのステージでは満足できなくなったんです。モチベーションは勝負気配ありあり、経営は堅実にです。
　ディスク を一枚入れておきましたからご覧になって下さい。私の農業とりわけトマトへの一途な思いが見て取れるでしょう。依頼の件についてはあまり深く考えなくていいいですよ。一点勝負ではむつかしいから私のところにも印▲が回ってきたと思ってくれたら正解です。でもトマトには本気です。トマトも同じ気持ちです。ロミオとジュリエットの物語のように環境が整わないだけです。最後になりましたがあなたのロミオにもよろしく、お騒がせしましたと。（2014.5.29)