冷害説

       3.26日、堺市中村町にて霜発生したでしょうか。翌日畑に来てみるとトマトの苗
約百本が枯れていました。定植したばかりの平豆、インゲン、南瓜まで全滅しています。こんな被害は初めてで茫然としました。いたずらか、ウイルスかと思いました。
冷害とは思いませんでした。寒の戻りがあったとはいえ最低で5、6度はありましたから。5、6度の気温が一晩で苗を枯らすほどの刃となりうるのか、と。しかも凍死したとされる彼等は軒下ですが、もっと過酷な一ヶ月前の気候を経験しています。彼等が葉の色を緑から紫に変えながら陽水の「氷の世界」を歌っていたことを私はよく覚えています。それだけに凍死説には、今もって合点がいかないのです。堺市の営農センターでなら死因を調べてくれるというので農水産課に間に入ってもらおうと電話すると、N氏が畑に来てくれました。間違いない、霜です。氏は嘱託として市役所に来るまで30年教鞭をとっていたそうです。どこの大学か訓練所か、それは聞いていません。霜が犯人だと言われて私が黙ってしまったのは、教鞭ということばに恐れ戦いたからではなく、霜なら凍死もありえると思ったからです。ただどうしても引っ掛かるのが気温です。5、6度もある地上に霜は降りるのかと訊くと、降りるとは言いませんが頷きました。
中村町にその朝霜が降りたか調べようと思えばできますが、もういいでしょう。一番収まりのいい霜犯人説は覆されないほうがいいのです。もっと怖いやっかみとか、ウイルスの侵入まで考えていたら、なりわいとしての農の破綻につながります。霜ニシトキマショウ。ただ、蕾もつけず、氷の世界を歌わされ先に逝ってしまった子らにはいくら詫びても足りません。黙祷。

     
     左から遅霜で枯れたトマト苗、「氷の世界」の作者 1948-没年不明